2005年05月13日

さゆり / アーサー・ゴールデン [書評]

さゆり 上さゆり 上
アーサー・ゴールデン / Arthur Golden
小川高義

単行本, 文藝春秋, 1999/11

 舞台は昭和初期から戦後にかけての京都。貧しい漁師の家に生まれた娘千代は、祇園の置屋に身売りされ、後に彼女のよき理解者となる「会長さん」との出会いをきっかけに、祇園でも指折りの芸妓さゆりへと成長してゆく。その千代=さゆりの半生と、芸妓であるがゆえに果たせない「会長さん」への思いを、当時の祇園の細やかな描写を背景に、老女の回想録として描いた異色の海外小説。原題を『Memoirs of a Geisha』という。

 もちろんフィクションであるが、米国人男性作家が、ありがちな誤解や偏見に陥ることなく、第二次大戦前後の祇園とそこに生きた芸妓の姿を、彼女自身を語り手にリアルに描いたことで話題となり、本国ではベストセラーになっている。しかしこと日本においては、そのことだけでこの作品を評価してしまうのは少々もったいないような気がする。続きを読む
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