2005年09月05日

江戸の性風俗−笑いと情死のエロス / 氏家幹人 [書評]

江戸の性風俗―笑いと情死のエロス江戸の性風俗―笑いと情死のエロス
氏家幹人

新書, 講談社, 1998/12

 性に関する商品や情報がちまたにあふれている一方、現代の多くの日本人にとって、性愛に関する話題は、人前で話すことがはばかられるものである。しかし江戸幕末期の高級官僚川路某の日記は、当時、猥談や艶笑談が一家団欒の話題として、日頃からおおっぴらに語られていたことを子細に伝えている。

 今の我々の感覚ではおよそ想像しがたい光景である。しかしそれは、川路家の家風がことさら風変わりだったということではない。そのような光景は、当時、どこの家庭でもごく当たり前に見られたのだと氏家は読み解く。そもそも現代の日本人の、恋愛や性愛はプライベートなものという考え方は、近代以降、西洋から輸入された思想に負うところが大きいのだという。ならば、それ以前の日本人は性に対してどんなイメージを持っていたのか。本書はそれをテーマに据えている。続きを読む

雪のひとひら / ポール・ギャリコ [読書日記]

雪のひとひら雪のひとひら
ポール・ギャリコ / Paul Gallico
矢川澄子

文庫本, 新潮社, 1997/11

 ポール・ギャリコの『雪のひとひら』を読む。矢川澄子の訳で、原マスミのカラーの挿絵付き。矢川澄子は詩人で澁澤龍彦の最初の夫人でもある。原マスミとは、数年前に流行った「ストレイ・シープ」を描いていた人。マルチタレントな人物で、作詞やナレーション、あるいはボーカルとして Zabadak のアルバムなんかにも参加している。佐吉には、むしろそっちのイメージの方が強い。

 『雪のひとひら』は、タイトルのとおり、山間に舞い降りた雪のひとひらが、自分はなぜこの世界に生まれたのかと自問しつつ、雪解け水となって川を下り、いくつもの波乱や出会いや別れを経験し、やがて大海で天に召されてゆくまでを綴ったもの。と云うと、何やら難しげに聞こえるかもしれないが、この作品は童話。雪のひとひらの旅は、もちろん、人の、特に女性の一生になぞらえたもの。続きを読む
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