2006年04月30日

追憶の夏 水面にて / H. M. ヴァン・デン・ブリンク [書評]

追憶の夏 水面にて追憶の夏 水面にて
H. M. ヴァン・デン・ブリンク / H. M. van den Brink
金原瑞人

単行本, 扶桑社, 2005/12

 ボート競技にかける若者の姿をみずみずしく描いた青春小説。とはいえ、いわゆるスポーツ小説やジュブナイルというのとは違う。これは、短いながら本格的な文芸作品である。

 新聞記者、TVディレクターという経歴を持つ著者H.M.ヴァン・デン・ブリンクの第一作となるこの作品は、本国オランダでベストセラーとなり、アメリカをはじめ他の多くの国でも高い評価を得ているという。邦訳の訳者金原瑞人も、自身のエッセイ『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』の中で、この作品を『短いけれど、数年に一冊といってもいいくらい完成度の高い作品で、本好きにはとても魅力的な本』と評している。続きを読む
2006年04月26日

特盛! SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話 / 大森望 [読書日記]

特盛! SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話特盛! SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話
大森望

単行本, 研究社, 2006/03/12

 え〜と、先日買った本。翻訳絡みで二冊。

 まずはご存知柴田元幸の『翻訳教室』。帯には「東大文学部翻訳演習完全収録」とある。けっ、なんでいなんでい、偉そうにしやがって! 東大ったって所詮は二十歳かそこいらのガキどものやってることじゃねえか。この佐吉様についていけねえわけがねえやィっ……などと強がってはみるものの、内心やはりビビっている佐吉。この馬鹿な頭で難しい文学のお話についていけるかしらん。

 そしてもう一冊。実はこっちを先に読み始めたのだが、SF翻訳者で豊崎由美との共著『文学賞メッタ斬り!』などでも知られる大森望の『特盛!SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話』。こっちは打って変わってかなりくだけた内容のエッセイ。結構面白い。で、今日はこっちの話。続きを読む
2006年04月21日

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉 / スティーヴン・キング [読書日記]

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉
スティーヴン・キング / Stephen King
風間賢二


文庫本, 新潮社, 2005/12

 歌舞伎の語源は「傾(かぶ)く」という動詞の連用形である。「傾く」とは、常軌を逸した身なりや振る舞いをすることを指す。歌舞伎は、出雲大社の巫女であったとも河原者であったとも伝えられる出雲阿国(いずものおくに)が、1603年、北野天満宮で興行した念仏踊りに端を発するとされ、以来、能や人形浄瑠璃(文楽)が武士や貴族のための高尚な芸能とされてきたのに対し、もっぱら庶民の娯楽として発展を遂げてきた。つまり歌舞伎はその歴史において、ひたすら観客のウケを取るためだけに様々な演出を生み出し、それをどんどんエスカレートさせてきた。そうして四百年の時が経過した現在、およそ舞台演出と呼ばれるもので、歌舞伎で試されたことのないものはない、とさえ云われている。

 そんなわけで(どんなわけだ?)、『ダーク・タワーII 運命の三人』下巻を読み終える。なるほど、溜飲が下がるとはこのことか。これがスティーブン・キングなのか。佐吉、暫し言葉を失う(ちょっと演出あり)。続きを読む
2006年04月18日

ダーク・タワーII 運命の三人〈上〉 / スティーヴン・キング [読書日記]

ダーク・タワーII 運命の三人〈上〉ダーク・タワーII 運命の三人〈上〉
スティーヴン・キング / Stephen King
風間賢二

文庫本, 新潮社, 2005/12

 そんなわけで、キングの『ダーク・タワーII 運命の三人』上巻を読み終える。やっぱすげえや、キングは!第I巻とはまるっきり別の小説みたいだ!

 黒衣の男との対決の後、一人荒野に残されたガンスリンガーは、砂浜に屹立する一枚の扉を見つける。扉を開くと、その向こうはなんと我々の住む現実世界。それもニューヨークへと向かう飛行機の中。ガンスリンガーは恐る恐るその「どこでもドア」を通り抜け、麻薬の運び屋の頭の中へ足を踏み入れる。そして、そこで繰り広げられるギャング映画さながらの大活劇……。続きを読む
2006年04月17日

これがキング版「どこでもドア」か… (◎_◎; [読書日記]

 肌寒い一日。『追憶の夏 水面にて』のレビューを書こうと思っていたんだけど、あまり進まず。アップはもうちょっと先になりそう。

 先日読み始めたスティーヴン・キングの『ダーク・タワー』シリーズの第II巻『運命の三人』上下巻を買ってきた。カバーには荒野に屹立する三枚の鉄の扉。なるほど、これが噂に聞くキング版「どこでもドア」か……。

 シリーズの第I巻『ガンスリンガー』は、この壮大な冒険譚のプロローグにすぎず、物語が本格的に動き出すのはこの第II巻から、という話は聞いていた。それでも『ガンスリンガー』のラストは、この先の展開に大いに期待を抱かせるスリリングなものだった。けど一方で、正直、この調子でずっと続いていくんじゃ読み進めるのはシンドそうだなあ、とも思っていた。そんな期待と不安が相なかばした状態で、佐吉は『運命の三人』のページをめくってみた。続きを読む
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