2007年04月30日

空飛ぶ馬 / 北村薫 [読書日記]

空飛ぶ馬空飛ぶ馬
北村薫

文庫本, 東京創元社, 1994/03

 書評家岡崎武志の読書論『読書の腕前』(光文社新書)を読む。具体的な読書の仕方をあれこれ指南しようという、昨今ありがちなハウツー本ではなく、来る日も来る日も本とともに暮らす生活の中で、彼が思い、感じてきたことを綴ったエッセイである。なかなかの好著だった。いずれここであらためてご紹介したい。

 さて、この『読書の腕前』の中に、岡崎がおすすめの本を紹介した章がある。そう、佐吉がこの『空飛ぶ馬』を読んでみようと思ったのも、それによってである。面白いのは、それが「本の本」、つまり「本について書かれた本」を紹介したくだりにあったことだ。丸谷才一、谷沢永一、荒川洋治、高橋源一郎、長田弘、関川夏央、小林信彦という、錚々たるビッグネームの書評集や読書論、読書エッセイに混じって、なぜか一冊だけフィクションが取り上げられていた。それがこの『空飛ぶ馬』だったのである。続きを読む
2007年04月22日

裁判官の爆笑お言葉集 / 長嶺超輝 [読書日記]

裁判官の爆笑お言葉集裁判官の爆笑お言葉集
長嶺超輝

新書, 幻冬舎, 2007/03

 前回の記事に続いて裁判ネタの本をもう1冊。こちらは新書で、長嶺超輝の『裁判官の爆笑お言葉集』。売れているらしく、佐吉がいつも立ち寄るS新都心のK書店では、入口近くのワゴンに大量に平積みされていた。

 広い意味ではいずれも裁判の傍聴記なのだが、先の記事で体験記のようだと評した『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』とは対照的に、こちらは、裁判における裁判官の印象的な一言を切り取り、それぞれにコラム形式の解説を加えた裁判官語録集である。裁判官に焦点を絞り、彼らの裁量や、判決文には表せない正直な心情を、それぞれの発言に集約させたものである。続きを読む
2007年04月21日

裁判長!ここは懲役4年でどうすか / 北尾トロ [書評]

裁判長!ここは懲役4年でどうすか裁判長!ここは懲役4年でどうすか
北尾トロ

文庫本, 文藝春秋, 2006/07

 2004年の「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の成立を受け、来る2009年、日本で裁判員制度が導入される。あなたもわたしも(有権者であれば)、裁判員として法廷に赴く日がいずれやってくるかもしれない。とはいえ、まだほとんどの人にとって、法廷とは、映画やTVの画面を通してしか見ることのない、普段の生活からはおよそ縁遠い、そしてできればあまり関わり合いになりたくない場所ではないだろうか。少なくとも評者にとってはそうだ。

 だから評者がこの本を手に取ったのも、裁判員制度の施行にそなえ、裁判についてもっと詳しく知っておかねば、などといった高尚な義務感に駆られたからではない。ただ単に、書店でぱらぱらとめくってみたら面白そうだったからという、いつもと変わらぬ理由からである。が、それらを読み終えたいま、評者は、裁判員を務めるのもわるくないかな、とさえ思っているのである。続きを読む
2007年04月10日

最近の掘り出し物三冊 [読書日記]

 Amazonをのぞくと、どの本(商品)のページにも、そこをのぞいた客がいかにも買いそうな他の関連商品を紹介する項目がある。「この商品を買った人はこんな商品も買っています」とか「関連商品を見る」だとか。「お客さん、実はこんなのもあるんですが、ついでにおひとついかがでしょ?」 ってなもんである。

 以前はそうした項目にはほとんど注意をはらわなかったのだが、最近の佐吉は、それらのリンクを時折開いてみたりする。どういう心境の変化かはわからない。まんまと彼らの計略にはまっているだけかもしれない。が、そうやって関連商品から関連商品へとリンクを辿っていくと、案外面白い本に出会ったりもするのである。さて、そんなふうにAmazonを渉猟していて見つけた最近の掘り出し物を三冊。

裏切り裏切り
カーリン・アルヴテーゲン / Karin Alvtegen
柳沢由美子

文庫本, 小学館, 2006/08/04

 まずは以前にも紹介したスウェーデンの新進作家カーリン・アルヴテーゲンの『裏切り』。『罪』、『喪失』のわずか二作で「北欧ミステリー界の女王」との名声を得たという彼女の三作目にあたる作品である。続きを読む
2007年04月01日

ブラック・ライジング・サン / ライール・ルーフリーパ [毒書日記]

ブラック・ライジング・サンブラック・ライジング・サン
ライール・ルーフリーパ / Rail Looflirpa
栄府りる

単行本, 卯月出版, 2007/04/01

 読み終えたのは、ボツワナ共和国出身、外交官として日本のボツワナ大使館に勤務した経験を持ち、熱心な親日家としても知られるライール・ルーフリーパの『ブラック・ライジング・サン』。日本の相撲界を舞台にした異色のスポーツ小説である。

 幕内力士のいない小さな相撲部屋に入門した、ボツワナ出身の元レスリング選手セレツェ・カーマは、体格、運動能力ともに同期の新弟子候補たちの中でずば抜けた存在だった。が、いかんせん角界には、黒人力士は認めないという不文律がある。彼の才能を惜しんだ部屋の親方は、おかみさんとともに一計を案じ、セレツェの全身にファンデーションを塗って新弟子検査に合格させる。

 そうして必ず全身を「白塗り」して土俵に上がることを運命づけられたセレツェだったが、彼は突き相撲に徹することによってその秘密を隠しつつ、連戦連勝。やがて十両昇進が目前に迫る。しかし実は、彼の真骨頂は真っ向から組み合っての四つ相撲にあった。セレツェは自分本来の相撲を取りたいという願望と、日本の相撲界にとどまりたいという思いとのジレンマに苦しむ。一方で、周囲は彼の秘密に気づきはじめ、ゴシップ週刊誌がそれをすっぱ抜く。昇進のかかったライバルとの大一番、「芸者!」、「女形!」とのヤジが飛び交う中、東の花道に、鋼鉄のような漆黒の筋肉に包まれた黒昇陽(こくしょうよう)、すなわちセレツェの姿があった……。続きを読む
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