![]() | ソーネチカ リュドミラ・ウリツカヤ 沼野恭子 単行本, 新潮社, 2002/12 |
新潮クレスト・ブックスの一冊、リュドミラ・ウリツカヤの『ソーネチカ』を読んでいる。漏れ聞こえてくるところによると、彼女はロシア文学の王道を行くとでも云うべき作家らしい。確かにこの『ソーネチカ』もそういう匂いを濃密に漂わせた作品だ。なるほどそうした向きにはウケが良いらしく、Amazonのページの読者レビューにも、技巧を凝らした文学チックな文章が並んでいる。
佐吉がこれまで好んで読んできた海外の作品には、シンプルな言葉、シンプルな文体を用いて情景を精緻に描き、そうすることで登場人物の心情を鮮明に浮かび上がらせる、というタイプのものが多かった。しかし、この作品は正反対。文章は、流麗ではあるが、一文一文が長く複雑で、これでもかとばかりに修飾語をかぶせ、隠喩もふんだんに使ったいかにも小説らしい文体。そのくせ描き方はひどく淡白で、まるで延々あらすじを読んでいるかのよう。
幼い頃から「本の虫」で、ひたすら地味な生活を送ってきた主人公ソーネチカは、図書館で出会った元画家の男に求婚され、結婚する。間もなく子供も生まれ、夫婦の生活は順調。それまで本の中にしか人生の喜びを見出せなかった彼女だが、今は平凡な生活に女としての幸せを感じている。しかしやがて、二人にお定まりの波乱が訪れ……。
今、約130ページというあまり長くないこの作品の100ページ辺りに差し掛かって、ようやくその波乱らしきものに出くわした。きっと、この作品の印象は残りの約30ページですべて決まるだろう。さて、さっさと残った仕事片付けて(実はそれが億劫で、こうしてブログの記事など書いているのだが)続き読もっと♪
【追記】
『ソーネチカ』を読み終えた。最後にあっと驚く急展開が用意されているわけではなく、むしろ予想通りの結末だったと云っても良いのだが、読み終えた後には深く静かな余韻が残った。ソーネチカはつまり、ずっと虚構の世界に生きてきた人生の中で、一度だけ現実の物語の主人公となり、それを静かに、しかし強い心をもって演じきり、そしてまた元の世界に戻っていったのだ。それは、我々がそれぞれの人生を生きながら、時に虚構の世界に精神を遊ばせるのと、ちょうど正反対の図式のようにも見える。我々一人ひとりの人生もまた、そうした物語の一つなのかもしれず、幾多の虚構の物語の一つひとつは、一人の人間の人生にも等しい意味や重みを持つものなのかもしれない。この静謐な物語は、ウリツカヤが愛したロシア文学への、彼女からのオマージュなのだろうか。ロシア文学、いや、文学そのものについてまったくの門外漢ながら、佐吉にはそんなふうに思えた。




特別大きな何かが起こるわけではないけれど、淡々とした文章の中に静かな余韻が残って心地よかった作品でした。
“虚構の物語の中に生きてきた人生の中で、一度だけ現実の物語の主人公となり、それを静かに、しかし強い心を持って演じきり、そしてまた元の世界に戻っていった”
という佐吉さんの解釈が面白く、とても興味深く拝見しました。
TBさせてくださいませ。
上は、解釈と呼ぶのもおこがましい、読み終えた直後の所感くらいのもので、あるいは思いきりミスリードしているかもしれません(笑)。
実を言うと、『ソーネチカ』については、途中まではさほど感興を覚えませんでした。が、上にも書いた通り、その終盤を読んで、前半にまで遡って、この作品を読んだことが一つの幸福な読書体験に感じられました。なんだか不思議です。あっと驚くどんでん返しがあったわけでもないのに。
記事、拝見しました。自身読書経験の豊富な方には、より近しい物語として響くものがあるのでしょうね。読書は、それが自分を省察するきっかけとなることで、さらに深い意味を持つものなのだと、私もあらためて思いました。
いずれ、この作品についての私なりのレビューを書いたら、あらためてこちらからTBさせていただこうと思います。どうぞよろしくお願いします。
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