2006年02月17日

江戸の怪奇譚−人はこんなにも恐ろしい / 氏家幹人 [読書日記]

江戸の怪奇譚−人はこんなにも恐ろしい江戸の怪奇譚−人はこんなにも恐ろしい
氏家幹人

単行本, 講談社, 2005/12

 読み終えたのは氏家幹人の『江戸の怪奇譚−人はこんなにも恐ろしい』。天狗、河童、神隠しなど、江戸の世の様々な怪異を、彼らしく、あくまで学術的なアプローチで、しかしながら一般の読者にもわかるよう平易に紹介した、彼曰く「学術書」である。「どうだ、怖いだろう」というのでもなく、またそれらの種明かしをしようというのでもない。この書は、そうした怪談の背景を探り、そこに潜む当時の人々の心の闇を映し出そうという、興味深い一冊である。

 我々のイメージの中ではしばしば「人情味あふれる」と形容される江戸の街にも、凶悪な、陰湿な、あるいは凄惨な「地獄」が潜んでいたことを、氏家はくっきり浮き彫りにする。ユニークな視点から、江戸の世の我々の知らない側面に光を当て、それをわかりやすく説き明かすというやり方は、彼ならではのものだ。ちなみに、最近朝日新聞かどこかの読書欄で紹介されていたらしいが、佐吉はそれを読んでいない。残念。

 上にも書いたように、氏家はあとがきで、これを「学術書」のつもりで書いたと云っている。それでいて学術書に付き物の注釈を嫌ったせいか、文中、括弧で説明を補った部分がやたらと目立つ。氏家自身の文章はとても平易なのだが、そんなわけでサクサク読むというわけにはいかない部分もある。しかしその分を差し引いても、知的好奇心をガンガン刺激してくれる楽しい一冊だった。

 ここ最近、幼児虐待や家庭内暴力、集団暴行、猟奇殺人、幼児性愛等など、「変」な事件は枚挙に暇がなく、現代の日本の社会は病んでいるなどともよく云われる。しかし泰平と思われていた江戸の世にも、やはりそうした闇があり、そしてそれは怪談という形で伝えられていたのだ。あーこわ。

 ついでながら、ご覧のとおり、この本はカバーのイラストがものすごい。正直に云うと、佐吉も(氏家を知っていたとはいえ)これを「ジャケ買い」したクチなのである。

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