2006年03月22日

カイト・ランナー / カーレド・ホッセイニ [読書日記]

カイト・ランナーカイト・ランナー
カーレド・ホッセイニ / Khaled Hosseini
佐藤耕士

単行本, アーティストハウスパブリッシャーズ, 2006/03

 先日書店で見かけて買った本。まずは紹介代わりに帯の文句をそのまま引用する。
Powerful, Beautiful, Moving, Big-hearted book!
全米300万部!NYタイムズベストセラーリストに64週ランキング。

12歳の冬、わたしは人を裏切り、嘘をつき、罪を犯した。
26年後、「もう一度やり直す道がある」という友人からの電話に
カブールへ旅立つ―。
自らを救う道を真に問う、心を揺さぶる救済の物語。

映画化決定!
 タイトルは『カイト・ランナー』。著者はアフガニスタンに生まれ、後にアメリカに亡命したカーレド・ホッセイニ。これが彼のデビュー作である。ちなみに映画はかのドリーム・ワークスが制作するらしい。

 「全米300万部!」とか「映画化決定!」とかいう謳い文句は、いつもなら佐吉の忌避するところである。それが今回はなぜ手に取ったのだろうと自問してみれば、答えはただ一つ、これがアフガニスタン出身の作家の手になる作品だからだ。アフガン人が書いた小説なんて、佐吉はこれまで一度も読んだことがない。それだけで、佐吉にとっては、読んでみようと思うに充分な理由だったのだ。

 それにアフガニスタンと云えば、あの9・11アメリカ同時多発テロを発端に、アルカイダを保護するタリバンを政権から退けるべく、アメリカが侵攻を仕掛けた国でもある。その詳しい経緯にはここでは触れないが、個々のアメリカ人は、アフガニスタン、延いてはイスラム社会全体に対してどんな思いを抱いているのか、それはこの小説がベストセラーになったことと何か関係があるのか。佐吉はそんな関心も抱いた。佐吉は半ば勢いでこの本を買い求めた。

 そして昨日それを読み始めた。書店でぱらぱらとめくってみた時点では、物静かな口調で淡々と語る作品かと思ったのだが、実際に読んでみると意外にも(と云っては失礼だが)ストーリーテリングが上手く、ぐいぐいページを繰らせる。少なくともここまでの佐吉の印象では、一気に読ませてしまうタイプの作品だ。描き方に持って回ったようなところがなく、展開もきびきびしていてテンポが良い。

 今はちょうど導入部を終え、物語の発端となるその事件に差し掛かったところ。導入部は、アフガニスタンという欧米人(や日本人)には馴染みの薄い舞台を読者に理解させる必要からか、ちょっと長めだが、だからといって冗長という印象はまったくない。

 帯の宣伝文句からうかがえるとおり、文学の普遍的テーマを扱った内省的な作品で、その描き方も端正だ。しかし、そうでありながら、ところどころアイロニカルな記述が挿入されていて、そのチクチク感が程よいスパイスとなって、湿っぽい感傷に陥ってしまうことを回避している。たとえば、こんな具合。

わたしの父は、かつてパキスタンのバルキスタン州で黒い熊と素手で戦ったことがあると、もっぱらの評判だった。もしそれがほかの人物だったら、ほら話として一蹴しただろう。悲しいかな、アフガン人は全体に大風呂敷を広げる傾向にあるからだ。たとえば、もしだれかがうちの息子は医者だと吹聴していたら、その子は単に高校の生物の試験で一度合格点を取ったことがあるにすぎない可能性が高い。
 ふふふ、いいねえ、この感じ。もっとも、こういうところが心の琴線(?)に触れてしまう読者というのもどうかと思うけど。ともあれ、この作品、案外拾い物だったかもしれない。

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この記事へのコメント

始めまして。
『カイト・ランナー』の書籍をPRしているものですが、
“カイト・ランナー”でググルってみたら、佐吉さんのブックレヴューにたどり着きました。
とっても素敵に本書をご紹介くださってありがとうございました。
思わず嬉しくてコメントを書いてしまいました。
この『カイト・ランナー』の仕事が来たとき、こんなに素晴らしい書籍を担当できる事になったことが嬉しくて、1回目は主人公アミールとハッサンの軸で読み、2度目は父ババとアミールの軸で読み、2度ともこの小説に引き込まれ、泣きました。
ありがとうをお伝えしたく。。。

Posted by chica at 2006年04月09日 03:11
chicaさん、はじめまして。

『カイト・ランナー』は先日読み終えましたが、上の日記はまだ冒頭しか読んでいない頃に書いたもので、あらためて眺めてみるとちょっととんちんかんな物言いもあったりして、こうしたコメントをいただくと、なんだか恐縮してしまいます。

この作品については、上にも書いたようにまったくの偶然で手に取り、物静かで内省的な純文学だと思って読み始めたのですが、後半は思いも寄らぬ展開に…。佐吉は、この作品を、純文学的要素とエンターテインメント的要素を高いレベルで融合させた作品だと感じました。

いずれ機会があれば、きちんとしたレビューもここに載せたいと思っています。多くの方に読んでもらいたい作品ですね。コメントどうもありがとうございます。

Posted by 佐吉 at 2006年04月10日 17:10
検索方面から漂着いたしました。
今年10月、チベット旅行のついでにでかけたタシュクルガン(中国・新彊ウイグル自治区内、パキスタン国境近く)で、映画「カイト・ランナー」撮影隊に遭遇。聞けばスタッフは米中合作で、スピルバーグ制作とのことでした。
先日帰国し、この原作のことを改めて調べやうと検索することしきり。佐吉さんのブログも含め、興味深い内容の作品と感じ、遅まき乍ら明日やうやう本屋で手にする予定です。
原作の内容の雰囲気を出す為に、あのやうな辺境で撮影していたのですね。
場違いな内容で、申し訳有りませんでした。

Posted by Lindenbach at 2006年11月21日 03:07
Kite Runnerがベストセラーになっているというので取り寄せて、途中まで読み進んでいる間に邦訳が出たというので、そちらも買ってしまいました。
アフガンの凧が、この作品の中でそのように登場してくるのかに興味があったのです。
アフガンに出かけて本場の凧揚げ大会に参加してみたくなりました。

Posted by Masami Takakwua at 2007年08月10日 08:51

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BOOK * 『カイト・ランナー』
カーレド ホッセイニ, Khaled Hosseini, 佐藤 耕士 カイト・ランナー アフガニスタンの空に色とりどりの凧が舞う日、 少年・アミールの心に罪の意識が宿る。 ..

複数恋愛進行中 at 2006-04-07 14:42

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