2006年04月07日

リセット / 北村薫 [読書日記]

リセットリセット
北村薫

文庫本, 新潮社, 2003/06

 読み終えたのは、新潮文庫で北村薫の『リセット』。『スキップ』、『ターン』と続く「時と人」三部作の三作目。2001年の作品で、2003年に文庫化されている。

 ちなみに前作『スキップ』は、17歳の女子高生が、タイムスリップによって、42歳の国語教師となった自分に乗り移ってしまう話。また『ターン』は、交通事故をきっかけに、同じ一日が繰り返される異世界に迷い込んでしまった29歳の版画家の女性の話。

 佐吉はどちらもだいぶ以前に文庫本で読んだ。どちらも面白かった。当然『リセット』も読みたいと思った。けれどその時点で『リセット』はまだ文庫化されておらず、単行本で読むか文庫落ちするのを待つかと迷っているうちに、記憶の片隅に追いやられてしまった。それをつい先日、いつものブックオフの105円コーナーで見かけ、買い求めたのである。

 『スキップ』ではタイムスリップ、『ターン』ではパラレルワールドという飛び道具が、いずれも作品の序盤に登場し、それぞれの物語の起点になっていた。しかし『リセット』の構成は、それらとはまったく対照的だった。

 『リセット』は三部構成になっていて、第一部、第二部は、それぞれ、女性の第二次大戦中の回想と、男性の昭和30年代半ばの回想。いずれも、起伏の少ない日常の話がゆっくりゆっくり語られてゆく。

 物語が動き出すのは第二部の終盤、この420ページ余りの小説が残り二割を切った頃。そこでようやく「時と人」シリーズらしい仕掛けが顔を見せ、急転直下、物語は思わぬ方向へ展開してゆく(もちろんそれ以前に伏線はあるのだが)。そしてそこからがこの作品の真骨頂。そこでほとんどの読者が、それまでの長く単調な物語に耐えてきた苦労が報われたと感じるに違いない。なぜならそれは、そこまでの退屈な道程があって初めて味わえるクライマックスだからだ。

 とは云うものの、やはりあらためて、佐吉には前半の退屈さは苦痛だったと告白せざるを得ない。細かな情景の描写がしばしば挿入され、そこにそれぞれの時代の日本人の暮らしぶりがありありと浮かんでくるのは面白いのだが、物語自体は、戦時下の少女の淡い恋心や、少年が大人の女性に寄せるほのかな想いを描いた、奥ゆかしい純愛小説の体で、そういう話を期待していなかった佐吉にはどうにも間怠(まだる)っこく感じられた。それでも『スキップ』、『ターン』が面白かったという印象があったから、希望を捨てずに読み続けることができたが、何の予備知識もなしにこれを読んだら、あるいは途中で放り出していたかもしれない。

 読み終えて真っ先に思ったのは「よく作り込んであるなあ」ということ。これは決して皮肉で云っているのではない。作品自体の印象は悪くない。人は皆いずれこの世を去ってゆく。しかしそれでも、親から子へと受け継がれ、あるいは言葉を通して、永く生き続ける思いがある。そうである限り、『我々は死んだりしない』。そんな真摯なメッセージが、爽やかな読後感と共に伝わってくる。ただ、それと同時に仕掛けの巧みさにも舌を巻いたということも、云っておきたいのである。

 ちょっとネタバレになっちゃうかもしれないけど、一言で云えば「今日は別れた恋人たちも生まれ変わって巡り会うよ」という話。と云っても、あの歌とは内容が全然違うんだけどね。ともあれ、なかなか良いお買い物でした (^。^

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