2006年04月13日

語るに足る、ささやかな人生−アメリカの小さな町で / 駒沢敏器 [読書日記]

語るに足る、ささやかな人生−アメリカの小さな町で語るに足る、ささやかな人生−アメリカの小さな町で
駒沢敏器

単行本, NHK出版, 2005/07/27

 面白い本に出会うと、それについてレビューを書きたいと思う……って、だからこそこんなブログをやっているわけで、それは云わずもがなのことなんだけど、如何せん佐吉は悲劇的なまでに筆が遅い。ここに載せているような、たかだか1000字ちょっとの拙いレビューでさえ、まとめられないうちに何日も過ぎてしまう、なんてことがざらにある。

 レビューを書くため再び本のページをめくる。と、気がつけば終わりまで再読している。それでもまだレビューは形にならない。そうこうしているうちに、つい別の本に手を出してしまう。いきおい、前の本に覚えた印象は上書きされてゆく。かくして、佐吉がその本から受けた感銘は、誰にも伝えられることなく、忘却の彼方に霞んでゆく。そうやって結局無為に通り過ぎてしまった本のいかに多いことか……。

 さて、そんなふうに今にも忘れ去られようとしていた本の中から、今日は二冊を救済(?)してみる。駒沢敏器の『語るに足る、ささやかな人生−アメリカの小さな町で』とH.M.ヴァン・デン・ブリンクの『追憶の夏 水面にて』である。

 『語るに足る……』は、小さな街ばかりを辿ってアメリカを横断した著者が、その旅の途中で出会った名もない人々の人生を綴ったノンフィクション(と、この説明だけでどんな内容かだいたい想像がついてしまいそうだし、また実際その通りなんだけど)。

 この作品は、旅行記というより、ちょっとした小説のような仕立てになっているところが面白い。文章がちょっとキザで、どこかナルシスティックなにおいも漂っているけど、そういうクサみが、かえってロードムービーみたいな雰囲気を醸し出し、一つの魅力にさえなっている。悪くない。表紙にエドワード・ホッパーの絵を使っているところなんかもカッコいい。

 一方の『追憶の夏……』は、第二次大戦直前のオランダを舞台に、川を流れる水の美しさに惹かれ、ボート競技に青春のすべてを賭けた一人の若者の姿を描いた小説。ちなみに訳者の金原瑞人は、エッセイ『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』(ああ、これも忘れ去られつつある一冊だ… (-_-; )の中で、この作品を『ここ数年で最高』と賞している。

 物語は、大戦によってオリンピック出場という夢が断ち切られてしまった後の、主人公の回想として綴られる。そこに、かつての輝いていた日々の若者の光と影が、またそうした日々が失われた後に残る記憶の美しさが、静謐に精緻に描かれていて印象的だ。佐吉にとっては今年一冊目の収穫である。

 『語るに足る……』は2月、『追憶の夏……』は1月に読んだ作品で、どちらも当時レビューを書くつもりで読んでいたらしく、あちらこちらに付箋が貼ってある。それも今となっては何やら哀しい。ともあれ、レビューには至らなくともこうして何かしら印象を書き留めておけば、少なくとも備忘録にはなるだろうし、後で自分でそれを見て、あらためてレビューを書く気になることもあるかもしれない。そんなふうに思って、今日はこんなことを書いてみたというわけである。でも佐吉の場合、そうすると、それだけで何かを云ったような気になっちゃって、結局まとまったものが書けない、なんてことも往々にしてあるんだよね。困ったもんだ。

 なお『追憶の夏……』は、Amazonとかをのぞいてもさっぱり売れている気配がない(きっとこのタイトルで損してるんだと思う)。カスタマーレビューだってまだ一つもないし。ああ、これが翻訳ものの悲しさか……。こういうのこそ佐吉が、微力ながらも一生懸命紹介しなきゃいけないんだよなあ。マジ、レビュー書こ (-_-;

追憶の夏 水面にて追憶の夏 水面にて
H. M. ヴァン・デン・ブリンク / H. M. van den Brink
金原瑞人

単行本, 扶桑社, 2005/12

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