![]() | ヘヴンアイズ デイヴィッド・アーモンド / David Almond 金原瑞人 単行本, 河出書房新社, 2003/06/20 | |
昨年購入して、以来ずっと放置していたデイヴィッド・アーモンドの『ヘヴンアイズ』を読む。
デイヴィッド・アーモンドは、イギリスの児童文学(日本ではヤングアダルトに分類される。もっとも佐吉は、このヤングアダルトというジャンルの定義が、つまり従来からあるジュブナイルとどう違うのかが、いまひとつよくわからないのだが……)作家。デビュー作『肩胛骨は翼のなごり』で、イギリスのすぐれた児童文学に与えられるカーネギー賞、ウィットブレッド賞の両賞を受賞し、以来、子どもたちを主人公にした幻想的な作品を発表し続けている。
佐吉がこの作家を知ったのは、ちょうど一年前、彼の五作目にして当時の最新作『火を喰う者たち』によってだった。1960年代のいわゆるキューバ危機を背景に、一人の繊細な少年が、どこか狂気をたたえた大道芸人との触れあいを通じて体験した、ある奇跡を描いた作品だ。佐吉はこれがひどく気に入り、すぐさま彼のそれ以前の作品も買い求めた(その割にはこうして放置していた作品もあったわけだが… (-_-; )。
『火を喰う者たち』以前のアーモンドの作品には、必ず幻想の世界の住人が登場する。彼らは子どもたちと触れあい、子どもたちの心の内に何かをもたらし、何かを変えてゆく。それが物語の核となる。現実と幻想とが入り混じった世界を、アーモンドは繊細に美しく描く。そうした物語の結構は、彼の作品すべてに共通していた。
ところが、『火を喰う者たち』には、そうした幻想の世界の住人がいっさい登場しない。にもかかわらず、『火を喰う者たち』は前作以上に読者の現実と幻想との境界を揺るがし、何気ない日常を描いた場面の一つひとつが、読む者の心に強く響いてくる。この作品の訳者あとがきの中で、金原瑞人はこう云っている。
『アーモンドの何がそれほど魅力的なんだ、と思っている人には『火を喰うものたち』を勧めておこう。これまでに訳されている四冊ほどには不思議でもなく不気味でもない物語で、ほかの四冊以上にじわじわと切なさがこみあげてくる作品だからだ』つまり、アーモンドの物語世界を形作っているのは、必ずしも幻想の世界の住人の存在ばかりではないということだろう。少なくとも佐吉はそう理解した。
さて、その『火を喰う者たち』からさかのぼる格好で彼の作品を読んだ佐吉。『肩胛骨は翼のなごり』や『ヘヴンアイズ』を読んでの感想を率直に云えば、これらは確かに静謐で美しく、幻想的で面白い作品だった。しかし『火を喰う者たち』を読んだ後では、その印象もどこか色褪せたものに感じられる。それはつまり、佐吉も金原氏の云う『アーモンドの何がそれほど魅力的なんだ、と』感じる嗜好を持つ読者の一人だったということなのかもしれない。
その傍証というわけではないが、以前からアーモンドの作品が好きだったという人たちの書いたレビューを読むと、むしろ『火を喰う者たち』の方が、それ以前の作品にくらべて評価が低い傾向があるように思える。彼らにしてみれば、「こんなのアーモンドらしくない」といったところだろうか。ちょっと面白い。
久しぶりに『火を喰う者たち』を読み返してみようかな、と思った。
![]() | 火を喰う者たち デイヴィッド・アーモンド / David Almond 金原瑞人 単行本, 河出書房新社, 2005/01/14 | |
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佐吉さんのおっしゃる通り、私も『火を喰う者たち』に読みづらさを感じて、何となく積読にしていたクチでした。
けれども先日、この本に最後まで目を通してみて、本当によかったと思っています。
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