2007年04月01日

ブラック・ライジング・サン / ライール・ルーフリーパ [毒書日記]

ブラック・ライジング・サンブラック・ライジング・サン
ライール・ルーフリーパ / Rail Looflirpa
栄府りる

単行本, 卯月出版, 2007/04/01

 読み終えたのは、ボツワナ共和国出身、外交官として日本のボツワナ大使館に勤務した経験を持ち、熱心な親日家としても知られるライール・ルーフリーパの『ブラック・ライジング・サン』。日本の相撲界を舞台にした異色のスポーツ小説である。

 幕内力士のいない小さな相撲部屋に入門した、ボツワナ出身の元レスリング選手セレツェ・カーマは、体格、運動能力ともに同期の新弟子候補たちの中でずば抜けた存在だった。が、いかんせん角界には、黒人力士は認めないという不文律がある。彼の才能を惜しんだ部屋の親方は、おかみさんとともに一計を案じ、セレツェの全身にファンデーションを塗って新弟子検査に合格させる。

 そうして必ず全身を「白塗り」して土俵に上がることを運命づけられたセレツェだったが、彼は突き相撲に徹することによってその秘密を隠しつつ、連戦連勝。やがて十両昇進が目前に迫る。しかし実は、彼の真骨頂は真っ向から組み合っての四つ相撲にあった。セレツェは自分本来の相撲を取りたいという願望と、日本の相撲界にとどまりたいという思いとのジレンマに苦しむ。一方で、周囲は彼の秘密に気づきはじめ、ゴシップ週刊誌がそれをすっぱ抜く。昇進のかかったライバルとの大一番、「芸者!」、「女形!」とのヤジが飛び交う中、東の花道に、鋼鉄のような漆黒の筋肉に包まれた黒昇陽(こくしょうよう)、すなわちセレツェの姿があった……。

 とても外国人作家が書いたとは思えないほど、相撲界のディテールの描写がリアルだ。相撲の歴史に対する造詣の深さもそこかしこから窺える。そしてルーフリーパは、伝統を守ろうとする日本人の国民性を讃えながらも、これだけ外国人力士が活躍している時代にあって、それでも黒人力士は認めないという、日本相撲協会ひいては日本社会の頑迷さに対し、人種差別云々ではなく相撲の本来の思想を拠りどころに、一石を投じる。

 ボツワナは20以上の部族が居住する、文化の多様性を特徴とする国である。ルーフリーパの、コロンブスの卵的な明解な視線は、もしかすると日本人が決して持ち得ない、ボツワナ人ならではのものなのかもしれない。痛快な読後感とともに、小さく、しかし根源的な疑問の種子が胸に残る。

 なお、『ブラック・ライジング・サン』は、両国国技館内売店にて今日1日だけの限定販売。佐吉も早朝から行列に並び、それを手に入れた。表紙の裏には、ルーフリーパの直筆サインが記されており、その下には、いかにも親日家の彼らしく、落款(らっかん)まで捺されていた。

 ちなみにルーフリーパの部族には、古来、文字を右から左へと筆記する習慣があるという。佐吉も知ってはいたのだが、普段の癖でついそれを左から右へと読んでしまった。彼のサインは紛う方なくこう読めた。

 "Aprilfool Liar"。

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