2007年06月13日

ポートレイト−内なる静寂 / アンリ・カルティエ=ブレッソン [読書日記]

ポートレイト−内なる静寂ポートレイト−内なる静寂
アンリ・カルティエ=ブレッソン / Henri Cartier-Bresson

大型本, 岩波書店, 2006/10

 ふふふ、今日の読書日記はちょっと自慢げである。

 昨年10月、岩波書店から、アンリ・カルティエ=ブレッソン『ポートレイト−内なる静寂』という写真集が刊行された。

 アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)は、世界のフォト・ジャーナリズムに最も大きな影響を与えたと云われる、20世紀を代表する写真家であり、「世界最高の写真家集団」、かのマグナム・フォト(Magnum Photos)の創設者の一人でもある。カルティエ=ブレッソンは、35mmレンジファインダーを使ってのスナップショットを得意とし、またポートレート(人物写真)でも数多くの傑作を遺した。『内なる静寂』は、彼が50年以上に渡って、それぞれの時代の顔とも云うべき著名人や、際立って印象的な市井の人々を撮影した、ポートレートの傑作集である。

 佐吉がその写真集の存在を知ったのは、今年1月放送のNHK BS2『週刊ブックレビュー』によってだった。フォークシンガーの小室等が紹介していたのである。佐吉はぜひともそれを手に入れたいと思った。

 ところが、これがないのである。Amazon、bk1、楽天ブックス等々、どのオンライン・ショップをのぞいても、軒並み品切れ、在庫なし。そもそも版元に在庫がないらしい。ならばってんで、(やはりネットで)古本を探してみたが、これもない。以来半年、ときどき思い出したように検索していたのだが、見つけたのは一度だけ。それも、定価5,250円のこの写真集に、2万円近い値が付けられた古本だった。もちろん手が出なかった。

 佐吉はなかば諦めてかけていた。ただ眺めておしまいの写真集に、何千円も何万円も出すなんて馬鹿らしいじゃないか。いつしかそう自分に云い聞かせるようにさえなっていた。が、一昨日、佐吉はそれを見つけた。他の本を探すついでにダメ元で検索したら、ヒットしたのだった。それはYahoo!オークションに出品された一冊だった。

 見れば、状態は「良好」とあり、開始価格は2,500円。残り2時間で、まだ誰も入札していない。佐吉は我が目を疑った。この写真集がこんな値段で出品されるはずがない、仮に出品されたとして、この時間まで1件も入札がないなんてあり得ない、と思ったのである。何かの間違いじゃないのか? ひょっとして詐欺紛いの出品者かも……と思い、ひと通り調べもした。しかし、そうした様子はまったくなかった。これまでの評価を見ても、いたって良心的な出品者である。佐吉は、胸の高鳴りを抑えつつ、入札した。

 しかし、もちろん世の中そんなに甘くはない。案の定、1時間後、他の入札者に更新された。さらに30分後、別の入札者が更新。そうして最高入札額3,100円で残り5分を迎えた。

 さて、どうしようか。当然むこうも、日本のどこかでモニターにかじりついて、その様子を見守っているに違いない。安易に動けば、相手にあっさり更新されて、はい、それまでよ、だ。いったいどのタイミングでいくらで入札したら勝てるのか。オークション初心者の佐吉は、その辺の勘どころが、まだイマイチ掴めていない。

 と、そこへ康文がやってきた。「何やってんの? 更新されてるじゃない? いいわ、私が入札する」と、呆気にとられる佐吉を尻目に、彼女のPCから自身のIDでログインした。康文が入札したのは終了2分前だった。入札額はわからない。自動入札によって、画面上にはその時点で落札可能な最低金額3,200円が表示される。予想どおりあちらも動いた。3,300円、3,400円と、リロードするたびに最高入札額が上がっていく。佐吉ははらはらしながら、ただその展開に目を瞠っているしかなかった。

 オークションが終了した。落札価格は3,500円。落札者の欄には康文のIDがあった。経過を見ると、やはり相手は100円ずつ入札額を上げていたらしい。むこうの最後の入札額は、康文のそれと同じ3,500円だった。先に入札した康文が優先されたのだ。危なかった。相手も、是が非でも手に入れたかったに違いない。むこうにもう一度入札するチャンスがあれば、間違いなく逆転されていただろう。薄氷の勝利だった。しかし、まだ心臓がばくばくいっている佐吉に、康文は澄ました顔でこう云い放つのだった。「レベルの低い戦いだったね」

 はあ、左様ですか…… (-_-;;;

 ともあれ、念願の『内なる静寂』が手に入った。持つべきものは(オークション慣れした)細君である。送料、手数料込みで支払い総額は約4,000円。2日後の今日、現物が届いた。なるほど、確かに状態は「良好」だ。というか、新品同然だ。まずは良い買い物をしたことにほくそえみ、次いでかすかな緊張を覚えつつ、いつになくおごそかに表紙をめくる。

 収録されているのは、「20世紀の巨人たち」とでも形容すればいいのか、目も眩むほどの錚々たる人物たちのポートレート。クリスチャン・ディオール、キュリー夫妻、マーティン・ルーサー・キング、ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、マルク・シャガール、マリリン・モンロー……。生意気そうな目付きをした、若き日のトルーマン・カポーティの姿もある。

 しかしそこに、作為的なポーズや表情は一つもない。どの写真にも、ただ一人の、あるいは複数の、まったく素のままの人間の姿が焼き付けられているだけ。彼らの存在そのものが切り取られていると云ってもいい。不意に、自分がいわゆる神の目線で、彼らを直接眺めているような錯覚にさえ陥る。カルティエ=ブレッソンは、自身の撮影したポートレートについて、こうコメントしている。「内なる静寂を捉えたい。私が訳したいのはその人格であって、表情ではない」

 『内なる静寂』は、カルティエ=ブレッソンの作品の維持管理を目的に設立されたアンリ・カルティエ=ブレッソン財団が、その収蔵作品のみで構成する初の展覧会を機に刊行されたものである。ちなみに表紙は、ノーベル文学賞を受賞したフランスの作家、サミュエル・ベケットである。

 なお、来る6月19日より東京国立近代美術館で「アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌」展が催される。興味を持たれた方は、足を運んでみてはいかがだろう。


【追記】

 調べてみたところ、今ならいくつかのオンライン・ショップで『内なる静寂』が入手可能らしい。岩波書店のサイトには長らく「重版中」とあったが、ようやくその第2刷が発行されたようだ。あるいは展覧会の開催に合わせたのかもしれない。とにかく買うなら今がチャンスである。

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