2005年09月05日

雪のひとひら / ポール・ギャリコ [読書日記]

雪のひとひら雪のひとひら
ポール・ギャリコ / Paul Gallico
矢川澄子

文庫本, 新潮社, 1997/11

 ポール・ギャリコの『雪のひとひら』を読む。矢川澄子の訳で、原マスミのカラーの挿絵付き。矢川澄子は詩人で澁澤龍彦の最初の夫人でもある。原マスミとは、数年前に流行った「ストレイ・シープ」を描いていた人。マルチタレントな人物で、作詞やナレーション、あるいはボーカルとして Zabadak のアルバムなんかにも参加している。佐吉には、むしろそっちのイメージの方が強い。

 『雪のひとひら』は、タイトルのとおり、山間に舞い降りた雪のひとひらが、自分はなぜこの世界に生まれたのかと自問しつつ、雪解け水となって川を下り、いくつもの波乱や出会いや別れを経験し、やがて大海で天に召されてゆくまでを綴ったもの。と云うと、何やら難しげに聞こえるかもしれないが、この作品は童話。雪のひとひらの旅は、もちろん、人の、特に女性の一生になぞらえたもの。

 これは良かったなあ。特にラストシーン。雪のひとひらが自らの最期を受け入れ、来し方を振り返る場面。彼女はずっと、この美しく調和した世界を作ったのは何者なのかと問い、さらにそこに自らがあることの意味を問いながら、様々な体験を経てそこに辿り着く。だけど、結局、その答えは最期まで与えられず、それに答えられるのは他ならぬ自分自身であることに気付く。

 訳者あとがきで、矢川澄子はこの作品を、「女の一生」を描いた慈愛に満ちた作品として、見事に批評している。確かに、主人公は女性だから、必然的に物語も女性の一生を描いているわけだし、女性だからこそ感じ取ることができる場面もあると思う。けど、男である佐吉は同時に、ことほどさように女であることにこだわらなくても良いんじゃないかとも思っている。それは、この作品には確実に、男女を問わず共感できるものがあるからだ。

 ただ、こういう作品について何かを書くのは難しい。佐吉なんぞが書くと、単に賞賛の言い回しを工夫するだけの退屈な文章になってしまいそうな気がする。レビューを書くにあたっては、それが頭の痛いところ。

 ちなみにこの本は、例のブックオフで105円で買ったもの。ついでに、値段の話で思い出したけど、昨日、いつものさいたま新都心の紀伊国屋で、新潮クレスト・ブックスの新刊二冊を立ち読みしてきた。今度のはどちらも大作で、両方買うと5000円以上。思わず、ブックオフなら何冊分?と計算してしまった佐吉。どっちも面白そうなんだけどなあ……。

雪のひとひら雪のひとひら
ポール・ギャリコ / Paul Gallico
矢川澄子

文庫本, 新潮社, 2008/11/27
雪のひとひら雪のひとひら
ポール・ギャリコ / Paul Gallico
矢川澄子

単行本新装版, 新潮社, 2001/12


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この記事へのコメント

『雪のひとひら』は友達にプレゼントされて
読みました。
自分の来し方行方の謎、火との戦い、愛する者
達との出会いと別れが美しく書かれていて、
前向きな気持ちになれる本だと思います。
そして、自分も誰かに「Well done」という
ねぎらいの言葉をかけて貰えるような人生を送りたいなあ。

Posted by イーゲル at 2005年09月06日 08:45
コメントどうもありがとうございます。

実を云うと、この『雪のひとひら』と、同じくギャリコの『スノーグース』については、以前から関心はあったものの、童話、あるいは児童文学ということで、やや敬遠していたのですが、たまたま古書店でそれを見かけ、「この値段ならいいかな?」という、ひどく下世話な動機で購入したものでした。

が、いずれも思わぬ収穫でした。人の一生の、本当の核の部分だけを抽出し、それをこの上なく美しく描いた傑作だと思います。私も、この本から与えられるものは大きかったと感じています。矢川澄子氏の訳、原マスミ氏の挿絵というのも、あらためて眺めてみると、とても贅沢な人選ですね。

Posted by 佐吉 at 2005年09月08日 14:47

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