2008年01月10日

おまけのこ / 畠中恵 [読書日記]

おまけのこおまけのこ
畠中恵

文庫本, 新潮社, 2007/12

 畠中恵は、漫画家としていくつかの作品を発表するかたわら作家を志し、ミステリー作家の都筑道夫に師事したのち、2001年、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家としてデビューした。

 受賞作の『しゃばけ』は、病弱でしょっちゅう臥せっているが、情に厚く、案外芯の強い大店の若だんな一太郎と、手代の仁吉、佐助をはじめ、彼を取りまくさまざまな妖(あやかし)たちが怪事件の謎を解く、ミステリー仕立ての時代物ファンタジーである。のちにシリーズ化され、現在、第6弾までが刊行されている。

 『しゃばけ』シリーズは、そのライトノベルのような感覚が受け、時代物にはめずらしく若い女性を中心に人気がある。一方で畠中の時代小説は、本格的な時代物としての描写にも定評がある。『しゃばけ』シリーズとは別に、妖たちの登場しない時代物ミステリーとして書かれた『まんまこと』(佐吉は未読)は、昨年、直木賞の候補に挙がっている。

 『おまけのこ』は『しゃばけ』シリーズの4作目にあたる。2005年に発表され、昨年12月に文庫化された。そしてそれが、佐吉の今年最初の1冊になった(などと書くと、佐吉が畠中作品を文庫でしか読んでいないことがバレバレで、根っからのファンの方にはお叱りを受けそうだが、そこはまあ、気づかなかったことに……え、だめ?)。

 『おまけのこ』には5つの短編が収録されている。関わった者すべてに災厄をもたらす妖が登場する「こわい」、屏風のぞきが商家の娘に悩みを打ち明けられる「畳紙」、幼い若だんなが影女の謎に挑む回想録「動く影」、若だんなが禿(かむろ)の足抜けを手助けする「ありんすこく」、そして表題作でもある鳴家(やなり)の冒険譚「おまけのこ」。前作までずっと脇役だった屏風のぞきや鳴家が主役になる話があったり、一太郎の幼時の回想があったりと、内容はバラエティに富んでいる。今回も一太郎以下お馴染みの面々が、さまざまな怪事件や珍騒動に巻き込まれ、それぞれが期待に違わぬ活躍をする。

 もっとも、だからおもしろいと感じるか、だからつまらないと感じるかは、読者に依るだろう。なんとも煮えきらない云い方で恐縮だが、この作品については、そうとしか云いようがない。つまり『おまけのこ』は、『しゃばけ』シリーズの1冊として、最大公約数的なファンの期待に過不足なく応えた作品であって、それ以上でも以下でもない。それゆえ、一人ひとりの読者がこれをおもしろいと見るか、物足りないと見るかは、それぞれがこの作品に何を期待していたかによるだろう、と云うしかないのである。

 ぶっちゃけて云えば、ここに至って『しゃばけ』シリーズもややマンネリ化したということなのだが、こここでそれを批判的に指摘することはちょっと躊躇われる。というのは、この作品をライトノベルとして見た場合、まさにそれこそがもっとも大事なことなのではないか、と思うからである。上のように持って回った云い方をするのも、それがためである。

 誤解のないよう云っておくが、佐吉は決してライトノベルを馬鹿にしているわけではない。小野不由美、桜庭一樹、乙一など、本格小説においても高い評価を得ているライトノベル作家がいることはむろん知っているし、自身、ライトノベルに分類される小野の『十二国記』シリーズを愛読している。

 で、その『十二国記』シリーズを愛読した経験から云うのだが、ライトノベルのページを繰るとき、読者が(少なくとも佐吉が)いちばん期待していることは、お馴染みのキャラクターたちが、そこで自分のイメージどおりに活躍してくれることである。物語自体は、そりゃおもしろいに越したことはないが、さして重要ではない。よしんばストーリーが退屈だったとしても、その中でキャラクターたちが活き活きと動き回ってくれれば、それで満足できてしまう。ライトノベルとはそういうものだと佐吉は思っている。少なくとも、そういう側面があると云うことはできる。

 繰り返しになるが、『おまけのこ』のそれぞれの短編での、一太郎や妖たちの活躍は、決してファンの期待を裏切らない。ストーリーに関しては、正直、ライトノベルを通り越してジュブナイルと呼ぶべきではないか、と思えるような短編もあったが、それはそれで(とりわけ若年層を意識した)一種のファンサービスとして評価することができる。あるいは『おまけのこ』は、ずっと「ライトノベルのような」と形容されてきた『しゃばけ』シリーズが、正真正銘ライトノベルであることを、高らかに宣言した作品なのかもしれない。佐吉はそんな印象を受けた。

 個人的には、この本に収録された5編の中では、「ありんすこく」が良かった。コミカルなシーンを織りまぜつつ、登場人物それぞれの心のひだを丁寧に描いていて、さらりと読める楽しい小品ながら、読後にどこか切ない気持ちを残してゆく、佳作である。

おまけのこおまけのこ
畠中恵

単行本, 新潮社, 2005/8/19

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