![]() | 納棺夫日記 増補改訂版 青木新門 文庫本, 文藝春秋, 1996/07 Amazon |
本書は、富山県で葬儀社に勤め、遺体を拭き清め棺に納める仕事に就いていた著者が、その「納棺夫」としての日々と、それを通して思い巡らせた生と死についての哲学的論考を、澄明かつ力強い文章で綴った一冊である。本編は3つの章から成っており、もともと地方出版社から刊行されたものを文庫化した本書には、それに加えて「『納棺夫日記』を著して」という後日談が収められている。
著者の青木新門はかつて、東京の大学を中退し、故郷の富山でスナックを経営するかたわら詩や小説を書いていた。その頃たまたま店に立ち寄った作家の吉村昭に見出され、彼が編集委員を務める同人誌に小説を発表し、評判を得たこともあった。しかし、ならばと色気を出して書いた2作目以降は惨憺たる出来で作家になる目処は立たず、やがて経営していたスナックも倒産する。借金に追われ、夫婦喧嘩が絶えなくなり、それでもなお原稿用紙に向かい続ける夫に、生まれたばかりの娘のドライミルクを買う金もないと、妻は新聞を投げつける。床に落ちたその新聞にあった求人広告が、著者が「納棺夫」となるきっかけだった。どんな仕事なのかもわからぬまま、青木はその求人に応募した。続きを読む






