2007年04月10日

最近の掘り出し物三冊 [読書日記]

 Amazonをのぞくと、どの本(商品)のページにも、そこをのぞいた客がいかにも買いそうな他の関連商品を紹介する項目がある。「この商品を買った人はこんな商品も買っています」とか「関連商品を見る」だとか。「お客さん、実はこんなのもあるんですが、ついでにおひとついかがでしょ?」 ってなもんである。

 以前はそうした項目にはほとんど注意をはらわなかったのだが、最近の佐吉は、それらのリンクを時折開いてみたりする。どういう心境の変化かはわからない。まんまと彼らの計略にはまっているだけかもしれない。が、そうやって関連商品から関連商品へとリンクを辿っていくと、案外面白い本に出会ったりもするのである。さて、そんなふうにAmazonを渉猟していて見つけた最近の掘り出し物を三冊。

裏切り裏切り
カーリン・アルヴテーゲン / Karin Alvtegen
柳沢由美子

文庫本, 小学館, 2006/08/04

 まずは以前にも紹介したスウェーデンの新進作家カーリン・アルヴテーゲンの『裏切り』。『罪』、『喪失』のわずか二作で「北欧ミステリー界の女王」との名声を得たという彼女の三作目にあたる作品である。続きを読む
2007年04月01日

ブラック・ライジング・サン / ライール・ルーフリーパ [毒書日記]

ブラック・ライジング・サンブラック・ライジング・サン
ライール・ルーフリーパ / Rail Looflirpa
栄府りる

単行本, 卯月出版, 2007/04/01

 読み終えたのは、ボツワナ共和国出身、外交官として日本のボツワナ大使館に勤務した経験を持ち、熱心な親日家としても知られるライール・ルーフリーパの『ブラック・ライジング・サン』。日本の相撲界を舞台にした異色のスポーツ小説である。

 幕内力士のいない小さな相撲部屋に入門した、ボツワナ出身の元レスリング選手セレツェ・カーマは、体格、運動能力ともに同期の新弟子候補たちの中でずば抜けた存在だった。が、いかんせん角界には、黒人力士は認めないという不文律がある。彼の才能を惜しんだ部屋の親方は、おかみさんとともに一計を案じ、セレツェの全身にファンデーションを塗って新弟子検査に合格させる。

 そうして必ず全身を「白塗り」して土俵に上がることを運命づけられたセレツェだったが、彼は突き相撲に徹することによってその秘密を隠しつつ、連戦連勝。やがて十両昇進が目前に迫る。しかし実は、彼の真骨頂は真っ向から組み合っての四つ相撲にあった。セレツェは自分本来の相撲を取りたいという願望と、日本の相撲界にとどまりたいという思いとのジレンマに苦しむ。一方で、周囲は彼の秘密に気づきはじめ、ゴシップ週刊誌がそれをすっぱ抜く。昇進のかかったライバルとの大一番、「芸者!」、「女形!」とのヤジが飛び交う中、東の花道に、鋼鉄のような漆黒の筋肉に包まれた黒昇陽(こくしょうよう)、すなわちセレツェの姿があった……。続きを読む
2007年03月25日

喪失 / カーリン・アルヴテーゲン [読書日記]

喪失喪失
カーリン・アルヴテーゲン / Karin Alvtegen
柳沢由美子

文庫本, 小学館, 2004/12

 新進気鋭のスウェーデンのミステリー作家カーリン・アルヴテーゲンの既刊三冊をまとめて購入。この週末、うち二冊を読んだ。

 アルヴテーゲンは、1998年のデビュー作『罪』で注目を集め、2000年に上梓した第2作『喪失』でグラス・キー賞(ベスト北欧推理小説賞)を受賞、2003年に発表した第3作『裏切り』も好評で、今や「北欧ミステリー界の女王」とさえ呼ばれる存在だそうだ。

 『罪』の主人公ペーターは、経理係の横領によって日本円で二千万もの負債を抱えた零細企業の経営者。幼くして父を亡くし、その後母に疎外されてきた彼は、その心の痛みから自分に自信がもてず、人間関係をうまく築くことができない。さらにここ半年ほど、いつ訪れるともわからないパニック発作の恐怖に悩まされている。ペーターはある日、見知らぬ女から彼女の夫だという会社社長への届け物を頼まれる。が、その中身は足の親指。しかも、その社長ルンドベリの実の妻は三年前に死んでいるという。女の正体をつきとめ、その執拗な嫌がらせをやめさせてほしいと頼むルンドベリに、借金の肩代わりを条件に探偵役を引き受けたペーター。二人の間には友情さえ芽生えるのだが、知らず知らず彼らは女の術中にはまっていく。続きを読む
2006年05月30日

ヘヴンアイズ / デイヴィッド・アーモンド [読書日記]

ヘヴンアイズヘヴンアイズ
デイヴィッド・アーモンド / David Almond
金原瑞人

単行本, 河出書房新社, 2003/06/20

 昨年購入して、以来ずっと放置していたデイヴィッド・アーモンドの『ヘヴンアイズ』を読む。

 デイヴィッド・アーモンドは、イギリスの児童文学(日本ではヤングアダルトに分類される。もっとも佐吉は、このヤングアダルトというジャンルの定義が、つまり従来からあるジュブナイルとどう違うのかが、いまひとつよくわからないのだが……)作家。デビュー作『肩胛骨は翼のなごり』で、イギリスのすぐれた児童文学に与えられるカーネギー賞、ウィットブレッド賞の両賞を受賞し、以来、子どもたちを主人公にした幻想的な作品を発表し続けている。

 佐吉がこの作家を知ったのは、ちょうど一年前、彼の五作目にして当時の最新作『火を喰う者たち』によってだった。1960年代のいわゆるキューバ危機を背景に、一人の繊細な少年が、どこか狂気をたたえた大道芸人との触れあいを通じて体験した、ある奇跡を描いた作品だ。佐吉はこれがひどく気に入り、すぐさま彼のそれ以前の作品も買い求めた(その割にはこうして放置していた作品もあったわけだが… (-_-; )。続きを読む
2006年04月21日

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉 / スティーヴン・キング [読書日記]

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉
スティーヴン・キング / Stephen King
風間賢二


文庫本, 新潮社, 2005/12

 歌舞伎の語源は「傾(かぶ)く」という動詞の連用形である。「傾く」とは、常軌を逸した身なりや振る舞いをすることを指す。歌舞伎は、出雲大社の巫女であったとも河原者であったとも伝えられる出雲阿国(いずものおくに)が、1603年、北野天満宮で興行した念仏踊りに端を発するとされ、以来、能や人形浄瑠璃(文楽)が武士や貴族のための高尚な芸能とされてきたのに対し、もっぱら庶民の娯楽として発展を遂げてきた。つまり歌舞伎はその歴史において、ひたすら観客のウケを取るためだけに様々な演出を生み出し、それをどんどんエスカレートさせてきた。そうして四百年の時が経過した現在、およそ舞台演出と呼ばれるもので、歌舞伎で試されたことのないものはない、とさえ云われている。

 そんなわけで(どんなわけだ?)、『ダーク・タワーII 運命の三人』下巻を読み終える。なるほど、溜飲が下がるとはこのことか。これがスティーブン・キングなのか。佐吉、暫し言葉を失う(ちょっと演出あり)。続きを読む
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