![]() | エヴァ・ライカーの記憶 ドナルド・A・スタンウッド / Donald A. Stanwood 高見浩 文庫本, 東京創元社, 2008/08 |
著者のドナルド・A・スタンウッドは1950年カリフォルニア州生まれ。本作『エヴァ・ライカーの記憶』は1978年に刊行された彼のデビュー作である。スタンウッドは、ハイスクール時代に得た着想をもとに、オレンジ・コースト・カレッジの創作科に在籍していた20歳のときから8年の歳月をかけて、この長大なミステリを書き上げたという。翌1979年には日本でも紹介され、その年の「週刊文春傑作ミステリー・ベスト10」で第4位に輝いている。しかしながらスタンウッドは、その後凡庸な作品を1本発表したきり表舞台から姿を消している。つまり、『エヴァ・ライカーの記憶』はスタンウッド一世一代の作品なのである。
邦訳はのちに絶版となり、長らく復刊を望む声が高かったが、ここにきてようやくそれが実現した。本書の解説で書評家の川出正樹は、本格ミステリ、ハードボイルド、サスペンス、冒険小説、パニック小説など、エンターテインメントのさまざまな要素を包含したオールタイムベスト級の傑作、と、やや舞い上がり気味にこの作品を絶賛している。続きを読む