2008年02月04日

家守綺譚 / 梨木香歩 [書評]

家守綺譚家守綺譚
梨木香歩
単行本, 新潮社, 2004/01

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 「文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる」駆け出しの物書き綿貫征四郎は、若くして亡くなった学友高堂の実家に、ひとり家守として起臥している。時代はおよそ百年前の明治の末、場所は登場する地名から京都周辺と察せられるが、いずれもはっきりとは示されていない。

 とある嵐の晩、征四郎が布団を引っかぶって寝ようとすると、床の間の掛け軸から何やら音が聞こえてくる。
 布団から頭だけそろりと出して、床の間を見ると、掛け軸の中のサギが慌てて脇へ逃げ出す様子、いつの間にか掛け軸の中の風景は雨、その向こうからボートが一艘近づいてくる。漕ぎ手はまだ若い……高堂であった。近づいてきた。
 ――どうした高堂。
 私は思わず声をかけた。
 ――逝ってしまったのではなかったのか。
 ――なに、雨に紛れて漕いできたのだ。
 高堂は、こともなげに云う。
 のみならず高堂は、征四郎に「庭のサルスベリの木がおまえに懸想している」と告げ、征四郎は征四郎で、その言葉に「実は思い当たるところがある」と得心する。そうして「家守」征四郎の「綺譚」は始まる。河童、仔竜、人魚、小鬼、桜鬼……。さまざまな怪異が、まるで季節の風物がごとく、征四郎の周辺に現れては消えてゆく。続きを読む


2008年01月31日

藤沢周平のツボ 至福の読書案内 / 朝日新聞週刊百科編集部編 [読書日記]

藤沢周平のツボ 至福の読書案内藤沢周平のツボ 至福の読書案内
朝日新聞週刊百科編集部編
文庫本, 朝日新聞社, 2007/12

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 NHK BS に「わたしの藤沢周平」という番組がある。毎回ひとつの藤沢作品を取り上げ、その作品世界を紹介するとともに、各界から招かれた一人のゲストが、その作品への思い入れを熱く語るというものである。佐吉も何度か見たことがある。

 しかし考えてみれば、こんな番組が成り立つ作家はそうはいない。むろん一般にも各界の著名人にも、多くの愛読者がいる作家でなければならないことは云うまでもないが、だからと云って、人気作家なら誰でもいいというわけではない。いくら多くの読者に愛されている作家でも、皆が異口同音に賞賛するだけなら、毎回同じような話になってしまい、番組が続かない。

 そうしてみると、藤沢周平という人物は、多くの人々の心の琴線に触れ、なおかつそのそれぞれに、違った音色を響かせる作家だと云うことはできないだろうか。「わたしの藤沢周平」と番組のタイトルにもあるとおり、藤沢作品の読者は、それをひとつの個人的体験と捉えることによって、つまりそこに自分自身の人生を重ね合わせることによって、一人ひとりが違った感銘を受けるのかもしれない。そしてそれゆえに、今なお多くの読者が藤沢作品に惹かれるのかもしれない。続きを読む


2008年01月26日

ことばの波止場 / 和田誠 [読書日記]

ことばの波止場ことばの波止場
和田誠
単行本, 白水社, 2006/11

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 星新一や丸谷才一の一連の著作、最近では三谷幸喜のエッセイなど、本の装丁でもお馴染みのイラストレーター和田誠が、イラストならぬ「ことば」について語った一冊、『ことばの波止場』を読む。児童書に関するセミナーで、和田がはじめて行った、ことば遊びについての講演に加筆したものである。和田自身の「個人史」に乗せて、しりとり歌、替え歌、回文、アナグラムなど、さまざまなことば遊びの楽しさを、豊富な具体例とともに紹介している。

 その一例をここにも紹介しよう。「いろは」についてのエピソードである。

 「いろは」は、ご存知のとおり、仮名四十七文字をすべて一度ずつ使って作られた手習い歌である。かつては弘法大師の作という説もあったが、今は平安中期に成った詠み人知らずの歌とされている。続きを読む


2008年01月10日

おまけのこ / 畠中恵 [読書日記]

おまけのこおまけのこ
畠中恵
文庫本, 新潮社, 2007/12

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 畠中恵は、漫画家としていくつかの作品を発表するかたわら作家を志し、ミステリー作家の都筑道夫に師事したのち、2001年、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家としてデビューした。

 受賞作の『しゃばけ』は、病弱でしょっちゅう臥せっているが、人柄が穏やかで情に厚く、反面、案外芯の強い大店の若だんな一太郎と、手代の仁吉、佐助をはじめ、彼を取りまくさまざまな妖(あやかし)たちが怪事件の謎を解く、ミステリー仕立ての時代物ファンタジーである。のちにシリーズ化され、現在、第6弾までが刊行されている。

 『しゃばけ』シリーズは、そのライトノベルのような感覚が受け、時代物にはめずらしく若い女性を中心に人気がある。一方で畠中の時代小説は、本格的な時代物としての描写にも定評がある。『しゃばけ』シリーズとは別に、妖たちの登場しない時代物ミステリーとして書かれた『まんまこと』(佐吉は未読)は、昨年、直木賞の候補に挙がっている。続きを読む


2007年07月03日

あらすじで読む『松岡正剛 千夜千冊』? [雑記帖]

ちょっと本気な千夜千冊虎の巻−読書術免許皆伝ちょっと本気な千夜千冊虎の巻−読書術免許皆伝
松岡正剛
単行本, 求龍堂, 2007/06

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 昨年、百科事典とも見紛う前人未到の大部の書評集『松岡正剛 千夜千冊』(全7巻+特別巻)を刊行し、今なおウェブ上でその驚異的な連載を続けている松岡正剛の新刊が、先日出版された。『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻 読書術免許皆伝』である。『千夜千冊』についての文字どおりのガイドブックであると同時に、松岡が自身の読書論を語った本である。

 先週末、仕事帰りに書店でそれを手にとって眺めてみた(あとで他のと一緒にネットで注文すればいいや、と思ったので買わなかったけど)。すると、中身とは関係のない、云わばどうでもいいところで、一つ気になることがあった。それはその帯に書かれていた宣伝文句である。帯には「人生を変える読書術 この『一冊』で『千冊』が読める」とあった。佐吉はそれに違和感を覚えたのだった。続きを読む


Posted at 22:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記帖

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